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2024 2月 / Issue 149

南田産業様

「KASANES」パッケージ


断捨離と称して破棄、再び新しく購入するといった刹那な消費を繰り返すのではなく「直してでも使いたくなる」商品が注目されています。購入を考えるとき「長く使えるかどうか」が判断基準となった今、その費用はコストではなく「未来への投資」です。中身を伝えるパッケージにも「商品の思想を具現化」することが求められています。

2024 February & March Issue 149|月刊サガシキ


長く使えるひと工夫。衣替え対応“引き出し型”構造。

数ある業種の中で、石油産業に次いで環境への影響が大きいといわれるアパレル業界。高度経済成長と共に発展を遂げたレディメイド品(既製服)によってもたらされたのは、マーケットと利益の急拡大、そして服を「使い捨てる」発想の定着です。やがて今世紀に入ると、環境意識の高まりと共に目を背け続けた問題が顕在化します。大量生産と大量廃棄、膨大な水の消費と河川海洋汚染、劣悪な環境での労働と搾取。華やかな世界の舞台裏、負の側面ともいえる姿が晒されたことで、業界に変化が生まれました。それは、リサイクルが容易で生分解性を持つ環境負荷の低い天然素材をはじめとするエコマテリアルの利用、廃材やデッドストックの再利用といったアップサイクル(創造的再利用)の取り組み、環境や労働者への配慮、フェアトレード(公正な貿易)や寄付活動など、持続可能な産業をめざした生産指針の転換です。

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長く使えることは、商品が持つパフォーマンスの証明。それは持続可能性を高めるヒント。

環境問題や資源利用の意義が問われる今、重視されるのは売上への固執や短期的なトレンドの反映に留まらない「商品がもたらす未来」を考えるものづくり。それは“使い捨て文化の終焉”ともいえ、長い時を使い手と共に過ごすことを前提としたロングライフ・プロダクトが注目されています。このケーススタディともいえる案件が、佐賀県内で革製履物用材料・同附属品製造業を営む南田産業様とのお仕事。主軸のBtoBビジネスで培った技術と職人ならではの手仕事を活かしたオリジナルブランド「KASANES」のフラッグシップとなるプロダクト「ルームシューズ」用パッケージの開発です。

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購入時の輸送だけではなく「仕舞う」ことを前提とした、スリーブ式(引き出し型)構造。

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4辺とも壁を二重に、そして底板入り。強度保持と見栄えの良さを重視し、紙製でも立派な収納に。

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外側はライトグレー、中芯はなんとブラウン。ダンボールの機能はそのままに、とことん見栄え良く。

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商品ブランドを静かに、けれどしっかりと主張する、箔押し仕上げの「KASANES」ロゴマーク。

このルームシューズはハンドメイドの完全受注生産。使い捨てないことを前提として開発され、専用パッケージにも職人の仕事を連想させる「ぬくもり」が感じられることを希望されていました。通常、パッケージで高級品らしさを演出する場合、躯体強度が高い貼箱や額縁を設けた紙器をお勧めします。しかし本件ではもう一歩踏み込み、オンライン販売に最適な輸送時の衝撃吸収性があり、手仕事の温かみをも感じさせる「ダンボール」を使用することに。ここに、取り出す・仕舞うが前提となる引き出し型(=箪笥型)構造を採用したことで、使わない季節には保管する“衣替え”にも対応。これは「過剰生産・過剰消費・過剰廃棄」を当たり前としてきた消費行動とは対極にある、ロングライフ・プロダクトならではの考え方を取り込んだパッケージ設計です。持続可能性を高めるには「できるだけ長期間使用する」こと。このルームシューズは、職人によるリペア(補修・修繕)にも対応しているそうです。





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【sagasiki packaging Tips】
サスティナブルパッケージ
汎用性に優れ、使い捨てを前提にしないダンボールは、極めて高い古紙回収率(95%以上)と確立したリサイクルシステムによって環境負荷を抑えられる包装資材です。使用後、止め金などの金属・プラスチック・伝票といった異物を取り除けば、わたしたちの環境への意識次第でリサイクル率を高めることも。あらゆる分野で持続可能性が問われる今、注目したい素材がダンボールです。

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【Activity Introduction】
お色直し
ダンボールは、波状の紙(中芯)をシート状の紙(ライナー)で挟んだ三層構造。この波状部分は「トラス構造」と呼ばれ、上下から圧力をかけても潰れにくく、輸送が前提となるパッケージにぴったりです。近年では紙素材であることを活かし、使用紙の色や質感を変えたダンボールも登場、豊かな表現を可能にしています。たとえば特集のパッケージでは、外側のライナーだけではなく中芯の色まで変更することで、個性を演出しています。

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