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2022 6月 / Issue 134

本家池の家様

「いっちょくんしゃい」パッケージ

2022 June Issue 134|月刊サガシキ


地域の想いをその名に込めて。これぞ、ご当地パッケージ。

近年、特産品を主軸とした地方活性化策が人気です。南北に伸びた日本列島は、エリアごとに異なる文化と歴史があり、これらを特産品に絡ませることでオリジナリティに溢れた「地域ごとに異なる」魅力が生まれます。このローカル・オリジナルともいえる文化や歴史を反映しているのが「地域の伝承」です。日本各地には、さまざまな風習や民間伝承が残っており、数々のストーリーからは、世の中が「こうあってほしい」という願いや、得られる教訓や道徳観を元に「思いやり」の心を育む情操教育としての側面も垣間見えます。決して識字率が高いとはいえなかった時代、知恵深い年配者から「民話」として聞くことで、子供はもちろん、大人にも「地域の価値観」を広める、またとない素材であったことが想像できます。こうして広まった伝承は「昔話」として人々に愛され、関連する地域に深く根付いていきました。

2022 June Issue 134|月刊サガシキ


日本の原風景「里山」は民間伝承の宝庫。土地の自然と共生した暮らしの記憶が郷愁を誘います。

ところが、日本が国家レベルで技術的・産業的発展を遂げるほど、都市部への移住や核家族化も進み、伝承されてきた文化が「風前の灯」となってしまうケースも増えていきます。いま、地域特有の品々に価値を見出す動きは、発展を遂げる過程で起きた「忘れもの」を探しに行く行為ともいえ、地域の伝承をもとに開発された商品は、コロナ禍における理想的な観光手法ともいえる「マイクロツーリズム」の攻勢も相まって、各地で人気を博しています。こうした好例ともいえる案件が、佐賀県で菓子製造業を営む「本家池の家」様からの新商品ネーミングとパッケージ開発のご依頼です。

2022 June Issue 134|月刊サガシキ


地域の伝承「よどひめさん(與止日女命)」に由来する、優しい笑顔のキャラクター。

2022 June Issue 134|月刊サガシキ


手作り感と素材の良さ、そして心を込めて作られたことを伝える「手描き風」の背景仕上げ。

2022 June Issue 134|月刊サガシキ


末長く愛されることを願った品名「いっちょくんしゃい」で高める、土産菓子としての魅力。

2022 June Issue 134|月刊サガシキ


個包装も共通デザイン。開封するその瞬間までが、ファンづくりのためのプロモーション。

対象となる新商品は、バターたっぷりの生地で餡子を包み、女性がひと口で食べられるように仕上げたお饅頭。ネーミングには、その地域を訪れたからこそ購入する価値がある「ご当地感」が求められていました。そこで、地域の神社「與止日女(よどひめ)神社」に祀られ、周辺では「よどひめさん」と呼ばれ親しまれている御祭神が、このお饅頭を「ひとつください=いっちょくんしゃい(佐賀地方の方言)」と伝えた…というコンセプトと商品ネーミングで進行することに。パッケージは、無地箱に「専用包装紙」を掛けた仕様で店舗内のストックスペース効率化を図りました。さらに「バターたっぷりの生地」であることをひとめで伝えられるよう、バターを想起させるさまざまな濃度のイエローで表現します。そして、個包装にも「よどひめさん」を描き、隅々まで世界観を整えました。今日も、直営店・空港・駅・高速SAで「よどひめさん」の優しい笑顔が来店客を出迎えています。





2022 June Issue 134|月刊サガシキ

【KEY COLORS column】
トーン配色 / Tone on Tone

配色コーディネートでは「繰り返す」ことで効果を高めるテクニックがあります。特集のパッケージでは、商品イラストをクリームイエロー、背景色には純色に近いパーマネントイエロー、キャラクターの頰にはウォームイエロー。こうした同系色の繰り返しで雰囲気を出すのは「トーン配色」と呼ばれる配色トレンドのひとつ。いくつもの黄色を用いることで、芳醇な「バター感」を演出しています。

2022 June Issue 134|月刊サガシキ

【いいパッケージは、何が違う?】
限られた空間で営業(販売)をおこなう店舗運営において、各種ストック類の「省スペース化」は大きな課題です。これは包装資材においても同様で、折りたためる「紙器(板紙を折りたたんでつくる箱)」を用いたり、箱を「共用」することで効率化を図ります。この方法は、商品導入時にも効果的。商品ごとに「異なる包装紙」を纏わせれば、資材の効率化と告知効果を同時に高めることができます。

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