2025 2月 / Issue 155
ざびえる本舗様
「SANO」パッケージ
地域文化を体験できる郷土菓子。特徴的な模様や色彩が施されたパッケージは、訪れた人にその土地の美意識や歴史を伝えます。「この商品、このパッケージがあることが観光資源。」そう呼ばれることをめざして開発しています。
土地のゆかりを再構築。和洋折衷パッケージ。
東の果ての“島国”日本。周囲を囲む海によって外界との交流が制限され、世界でも珍しい文化が生まれました。実は、日本文化の発展の起爆剤となったのは「舶来」の品々。文字・道具・食物はもちろん、学問や宗教にいたるまで、外国で生み出された品や文化は、希少性と共に「先進性」を感じさせる存在でした。それらはやがて、遠く離れた国々への興味や関心、そして「憧れ」へと繋がり、人気を博していきます。そして、対象品がその文化に根付いていくほど、もたらされた地域(日本)ならではの感覚で「もっと使いやすく・もっと自分たち好みに」といった改良がおこなわれていきます。これは、異なる文化圏で生まれた品や作り方に「日本ならではの感覚や素材」を掛け合わせる“和洋折衷”の思想。その代表ともいえる存在が、カステラやボーロ(小麦粉の焼き菓子)をはじめとする、南蛮由来のお菓子です。
初めて目にする異文化の衝撃。いつの時代も外国の珍しい品々は、文化発展の起爆剤。
「南蛮菓子」とも呼ばれる菓子類はキリスト教宣教師が持ち込み、布教活動に利用したことからキリシタン(キリスト教徒)ゆかりの地で広まっていきます。ほどなく、日本人の味覚に合わせた改良が加わり「郷土菓子」として生まれ変わりました。すなわち、外国生まれの菓子に「日本ならではの感覚」が加わることで、日本人にとって馴染みやすい菓子へと昇華したのです。まさにこの折衷感覚を活かした案件が、大分の菓子メーカー「ざびえる本舗」様が開発された新商品、SANO(さの)。新たな郷土菓子をめざして、ざびえる本舗様の本社がある「佐野」にちなんだ商品です。
パッケージ構造は丁寧な開封でギフト感の演出に最適な「蓋身式(C式)」と呼ばれる2ピース構造。
蓋側の二箇所にカーブを設けることで「重箱」のようなイメージを演出。もちろん、重ね売りに対応。
南蛮文化の象徴ともいえる教会風の「ステンドグラス」には、大分の県花・県木「豊後梅」を添えて。
身箱側(商品を収納する側)は、鮮やかなグリーン。イメージしたのは、青々とした梅の実。
この商品は、大分の県花・県木でもある「豊後梅」を用いており、商品パッケージ上で中身を想起させるアイキャッチには最適。これを大分に根付く南蛮文化の象徴ともいえる教会風の「ステンドグラス」と組み合わせることで“郷土菓子らしさ”も高めることができます。さらに、メタル紙を使用してインクを透過させた「半透明の印刷」をおこなうことで、印刷部分にメタリック感が生まれ、ステンドグラス風の質感を演出しています。そして、パッケージ構造は蓋身式と呼ばれる2ピース構造。蓋側の二箇所にカーブを設けることで、重箱のようなイメージを演出。日本らしい「お土産・贈答品らしさ」が高まるように仕上げました。郷土菓子は地域のアイデンティティを象徴する存在です。その意義は甘味や食を超え、観光による地域活性化のきっかけとなり得ます。時代に応じた変化に対応しつつも、地域ゆかりの素材やその土地ならではの意匠を取り入れることで、地域文化を伝える“伝道師”としての役割を担うのです。
【sagasiki packaging Tips】
人にやさしく
商品パッケージには「機械で充填されるもの」と「人の手で詰められるもの」があります。その選定は、生産効率や販売量・流通先などによって変わりますが、人を介して詰める場合、作業者を選ばない工夫が欠かせません。たとえば、仕切り部分に「指穴」を設け「ここに指を入れるとパーツを起こしやすそうだ…」と直感的に感じさせることで、そっと組み立てを補助しているのです。
【Activity Introduction】
蓋身式(C式)構造
蓋身式(C式)は、蓋と身箱に分かれた2ピース構造のパッケージ。蓋と身箱が一体化した簡便に開封できるN式(TN式)とは異なり、両手で蓋を開けることから、丁寧な開封が必須となる“商品の登場感演出のための箱”ともいえます。また「硯箱」や「重箱」といった同じ蓋身式構造の木製箱を連想させることから、紙素材でありながら高級なイメージを演出しやすく、贈答品や進物をはじめとするギフトシーンで多く用いられる構造です。
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