2023 12月 / Issue 148
サン・クラルテ製薬様
「BIDAI」パッケージ
見た目は、華やかで美しいパッケージ。そこには、深い願いが包まれています。環境配慮紙に込めたのは、“持続可能な社会”をめざす、作り手の企業姿勢。社会の隅々に流通するパッケージは、企業と生活者をつなぐメッセンジャー。だからこそ「企業の考え方」を示すツールとなるのです。
見た目はとことん華やかに。環境配慮を「あたりまえ」に。
山積する課題の大きさから『社会全体で取り組むもの』と捉えられがちな環境問題。人間はもちろん、生命全体の存続が危うく、将来への持続可能性が問われる中、わたしたちが「今できること」を考えると、向き合うべき事象の大きさに驚かされます。しかし、あらゆる人に関わりがあるからこそ「まず、やってみる」という姿勢でひとりひとりが行動を起こせば、解決のきっかけも見出せるはず。たとえば、恒常的に「消費」が発生する生活者であれば、毎日の「あたりまえ」を見つめ直してみる。近年では“3R”として知られる「リデュース・リユース・リサイクル(減らす・再利用・再資源化)」に「リフューズ=ゴミになるものを受け取らない」と「リペア=修理する」を加えた“5R”という概念も生まれました。すなわち「つくる・つかう・すてる」という、大量消費・環境破壊を誘発する行動の抜本的な見直しです。
作ればいい、売れればいい、という時代の終焉。生み出す意味、購入する意義が問われる社会へ。
環境視点で「ものづくり」を考えると、将来的に続けていく、やがては次世代に繋げていくことを前提とした意識変革こそ「環境への負担を減らす開発」の着実な一手といえ、最初に着目したいのは「素材」の見直しです。わたしたちが担う商品パッケージ開発で考えれば「環境配慮紙」を前提に検討をはじめること。こうした商品開発のケーススタディともいえる案件が、今回ご紹介するパッケージです。サン・クラルテ製薬様は、福岡市で医薬品・化粧品・健康食品の通信販売をおこなう製薬会社。ご依頼はメイクアップに欠かせないプライマー「BIDAI」の商品パッケージ開発です。
商品(プライマー本体)色とリンクする、パール系ローズのキーカラー。
ブランドマークは「美=B」で構成し「バラ」と「ダイヤモンド」をイメージ。
コンセプト「美の土台」をイメージした「美を支える曲線」のキービジュアル。
使用用紙はバガスパルプ配合、しかも「FSC®認証」を取得した環境配慮紙。
対象品はベースメイク前に使用する化粧下地。バラ酵母や生コラーゲンを配合し、商品名の「BIDAI」は「美の土台」を意味しています。パッケージ開発ではこれらの要素をグラフィックデザインに反映、直感的な理解を促しました。具体的には、外装箱のアイキャッチとなるブランドマークは品名頭文字の「B」と「美」から着想し「バラ」と「ダイヤモンド」をイメージし、品名と併せてピンクゴールドの箔押しに。さらに、キーカラーをパールローズにすることで、整った肌のように淡く艶やかなイメージを演出。そしてもちろん「環境配慮紙」を使用し、本体チューブ・試供品も同様のデザインで仕上げました。2023年春、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行し、マスクの着用も個人判断ベースに緩和され、かつての日常が少しずつ戻ってきました。こうなると気になるのは、マスクのない(肌見せ)状態を想定したメイクアップ。誕生したプライマー「BIDAI」は、環境配慮紙という衣装を纏い、満を持してデビューしました。
【sagasiki packaging Tips】
ESGパッケージ
昨今耳にすることが増えた、ESG経営。投資活動から始まった概念で、環境(Environment)社会(Social)企業統治(Governance)を意味し、地球環境や未来をも見据えた「より良い経営を示す指標」といえます。こうした企業活動は伝え方が難しい概念ですが、特集した商品パッケージのように「環境配慮紙」を選択することで、多くの人に作り手の“持続可能な社会をめざす”企業姿勢を示すことができます。
【Activity Introduction】
カーボンニュートラル
特集で使用した用紙は、以前もご紹介したバガスペーパー。サトウキビを搾った後の植物繊維(絞りかす)をパルプとして原料化し、パッケージに使えるよう生産したものです。こうした生物資源は「バイオマス」と呼ばれ、太陽光や風力と並ぶ循環型資源。破棄した際に燃やしても『植物由来原料を焼却して排出される二酸化炭素は、原料の植物が成長過程で吸収した量と等しい』という考え方に基づいた「カーボンニュートラル」素材です。
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