2020 10月 / Issue 114
平戸物産館様
「カスドース」パッケージ
普遍性を追い風に。環境変化に負けないパッケージ。
国内外を問わず「新常態(ニューノーマル)」を求めて、社会は動きはじめました。感染症対策の基本は、病原体を「持ち込まない・持ち出さない・拡げない」こと。すなわち、感染症を予防するためのマスク着用、手洗いやうがいの実施とともに、密閉・密集・密接の「3密」を避け、身体的・物理的に「人との距離」を確保すること。場合によっては、人々の動きに対する「移動制限」が前提となります。こうした条件下での顕著な変化こそ「インターネット」への依存です。もはや、短期的とはいえない(人の)移動制限が恒常化する中、さまざまなビジネスや個々人の実生活の現場で「オンライン化」が進んでいます。この状態を商品を提供する企業視点で考えれば、競合他社との比較検討が容易で「集まりやすく離散しやすい」インターネットという巨大なマーケットに「膨大な企業が一斉に出店した」ともいえるのです。
銘菓「カスドース」。歴史や背景をもつ「本物」こそ、環境の変化に負けない普遍的な価値に。
競合が多くなればなるほど、他とは違う「何か」が必要で、商品特徴だけではなく、むしろ「嗜好性が高い」ことさえ、購入の引き金となります。伝え方を工夫すれば、国内各地に点在する「地域特産品」のように「代替えの効かない品」にとっては「追い風」にあるともいえるのです。今回、ご相談をいただいたのは、食品製造卸業を営まれる「平戸物産館」様。対象品は、菓子店「湖月堂老舗」様から志と技を受け継ぎ、昭和と平成、二代にわたって天皇皇后両陛下に献上された、平戸藩(松浦家)門外不出のお留菓子「カスドース」。まさしく、郷土菓子の逸品です。
パッケージ形状でイメージしたのは「袱紗包み」。大切な品をお届けする気持ちを込めて。
保管時には場所をとらず、組み立てもしやすく。店頭オペレーションに配慮した「一体型」構造。
ダマスク模様や南蛮人イラストで表現した「洋風」と紅白で表現した「和風」をミキシング。
触れたとき、布地(風呂敷)のような質感を与える「疑似エンボス」による表面加工。
「南蛮菓子」として知られるカスドースですが、実は「和菓子」としての一面も持っています。平戸藩主であり、武家茶道「鎮信流」の家元でもある松浦家において「茶席の菓子」として親しまれる存在でした。この「和洋折衷」感こそ、デザインのポイントです。そこで、パッケージ形状は「風呂敷」をイメージし、箱の四方から紙を伸ばし天面で重ね、商品を「大切に包み込む」ような構造に仕上げ、柄には、中世期に世界を席巻した「ダマスク模様」を用いて、南蛮由来とされる菓子の歴史を表現、これを伝えた「南蛮人」をメインキャラクターとして配しました。目指したのは、商品が重ねた「歴史」と本物の「品格」を転化し、時代に合わせて伝え方を整え、パッケージが「商品そのもの」を表すこと。社会が「新常態」を迎えようとする今日、問われているのは企業の「志」と商品が持つ「価値」。商品の「背景」ともいえる「歴史」を体現したパッケージは、まもなくリリースです。
【KEY COLORS column】
レッド&ホワイト:Red & White
対極・対照にあるものを表現する、有彩色(赤)と無彩色(白)の組み合わせです。日本では「祝い」を示唆し、源平合戦がルーツとされる「紅白」として知られ、日本国旗の構成色でもあります。特集では、誰もがイメージしやすい「日本」を想起させる色彩として用い、パッケージを包むように配した洋風の「ダマスク模様」との融合で「和洋折衷」感を演出しています。
【いいパッケージは、何が違う?】
特集のように「歴史」や「郷土」を担う商品のパッケージづくりでは、商品の「背景」となる部分、連綿と続く「文化」を伝えていく役割があります。たとえば「開封時にはじめてわかる工夫」は「購入後」の納得感を高め、ギフトとして利用された場合には、商品を知らない方にも商品と背景を伝える「語り手」として「未来のファンづくり」をサポートします。
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