2019 2月 / Issue 94
みろく酒造様
「Bajou(バジョウ)」パッケージ
どこから見ても、美しく。すべてを「魅せる」パッケージ。
あらゆるメーカーにとって「商品開発」は欠かせない活動のひとつです。大抵の場合、開発の大きなポイントとなるのは「これまでにない」商品であること。新しい素材、新しい組み合わせ、新しいデザイン…。対象となる商品で、顧客となる人々と「どのような」コミュニケーションをおこないたいのか、それぞれの視点で工夫を凝らします。こうした商品開発において、常に問われるのは存在価値ともいえる、生み出された「理由」です。コモディティ化が進んだ世の中では「明確な特徴がない」ことは致命的であるともいえ、散発的な「思いつき」とは異なる「本質」を見つめた開発が求められます。たとえば、主となる使用素材の背景や、商品が誕生した地域(もしくはメーカーの創業地)の歴史や特性、これまでにない効果や使い方など、あまたある商品とは異なる、対象品「だけ」にしかない、存在の理由といえるものです。
商品認知拡大のためには、従来型のターゲット(=男性)から変化させることが大切。
すなわち、国内メーカー各社がおこなう「地域の特色を活かした」商品開発は、自然なかたちで存在価値を高めた状態で商品を送り出せる、またとないチャンスであるといえます。今回ご相談いただいた案件は、まさにこうしたケース。大分で焼酎製造を営まれている「みろく酒造」様は、大分山香産の麦を使用し、大正初期にゴールドラッシュに沸いた「馬上金山(ばじょうきんざん)」を連想させるリキュール「Bajou(バジョウ)」を開発されました。素材も名前も地域由来の商品を、地元のPRに活かしながら、焼酎中心のターゲットから拡大していく戦略です。
カットグラスのような雫型の容器、中身が見えるクリアケースのパッケージ。
商品をしっかりと固定させるボトルネックホルダーは、重量物である「液体」への配慮。
商品名の由来のひとつ、ドイツ産の薔薇「Blue Bajou」とキーカラーをパターン化。
白地に無色のニスで描いた薔薇(疑似エンボス)が、視覚と触覚の双方にアピール。
パッケージ開発のヒントは女性目線。実は、商品名の「Bajou」は、同じ綴りのドイツ産の薔薇「Blue Bajou(ブルーバユー)」にも由来します。薄い紫色の花弁を持つこの薔薇の「淑女」のように上品なイメージをパッケージの随所に活かすことで、これまでの焼酎イメージとは明らかに異なる「優美な」商品パッケージへと仕上げていくことを目指しました。ポイントは「どこから見ても美しい」こと。たとえば、中身(液体)と容器で表現した「黄金の一滴」イメージ、これと対比させ、引き立てる「Blue Bajou」のキーカラー、これらを「魅せる」ためのクリアケース、商品保護とサプライズ感を両立させたスリーブ構造。幾重にも仕掛けた工夫で、パッケージは「魅せる」ためのコミュニケーションツールとして機能します。こうして発売されたリキュール「Bajou」が、地域でも注目を集めたことはいうまでもありません。ものづくりの基本をしっかりと踏まえた商品開発は「末長く愛される」ブランドへの第一歩となるのです。
【KEY COLORS column】
藤紫:Blue Bajyo(ブルー・バユー)
ドイツで生まれた珍しいバイオレット系のバラの色です。極めて仄かで上品な香りと神秘的な花色は、人の心を強く惹きつけ、まさに「淑女」を連想させる色合いです。同色の和名は藤紫。平安時代から女性に人気の「藤色」と、高貴な色の象徴である「紫」を組み合わせた色名です。特集では、パッケージのキーカラーとして商品に寄り添い、主役であるお酒(黄金色)の美しさを一層引き立てます。
【いいパッケージは、何が違う?】
パッケージは通常、四方を壁で覆った「モノコック」構造。しかし、特集のように商品を「見せたい」場合、窓を設けるか、壁面の一部を無くすしかありません。壁面の構成要素が少なくなれば、必然的に強度は弱まります。そこで、商品(ビン)そのものを「躯体を支える柱」として利用した「フレーム」構造を採用。逆転の発想で「見える」のに「強い」パッケージを生み出した一例といえます。
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