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2021 5月 / Issue 121

玄海漬 様

「ドライフルーツの粕漬け」パッケージ


「きっかけ」をつくろう。パッケージで伝える食文化。

抹茶、日本酒、そして、胡麻に柚子。いずれも和食には欠かせない素材です。いまやこれらの素材は、スイーツレシピの常連。かつて、日本の料理人が「ワイン・シャンパン・チーズ・トリュフ」といった、世界に素材を求めたように、いまや海外のシェフやパティシエから「日本の素材」に熱い視線が注がれています。異なる地域で発展してきた食どうしが、出会い、融合し、広がることで、新たな食を生み出す様子は、まさに(食の)文化そのもので、彼らにとって珍しい日本の素材はもちろん、季節を大切にする文化(和食)を学び、自身の料理に反映させ、料理のレシピだけではなく「精神」までを取り込もうとする姿勢は、相手への敬意と食の多様性への賞賛へと繋がる文化交流ともいえます。未知の食材や調理法との出会いは、食の「持続可能性」を示唆してくれる、またとない機会といえるのです。


リンゴにキウイ、パイナップル。酒粕の水分が吸収され、ジューシーな新食感に。

まさしく「食のマリアージュ」とも呼べる組み合わせの妙は、国や地域を跨いだ出会いに限らず、歴史を軸とした「伝統食」においても顕著に表れます。馴染み深い素材に新しい調理法を組み合わせたり、古くから伝わる調理法に意外な素材を組み合わせて、新たな美味しさを引き出す方法です。今回ご相談いただいたのは、佐賀県唐津市で水陸産粕漬の製造・販売をおこなう玄海漬様。日本の伝統的な調理法「粕漬」を「今」の視点で見つめ直し、果物と組み合わせた「ドライフルーツの粕漬け」で若年層の取り込みを狙ったパッケージ開発です。


アイキャッチ効果と「記憶に残る」を目指した、使用した素材(フルーツ)のキービジュアル。


若年層へのアピールとシリーズ品であることを「ひとめで」伝える、ポルカドット(水玉)柄。


マチ(側壁)がない構造で、組み立てる(箱に起こす)必要のない、商品を「包む」パッケージ。


コストを抑えながらも、商品をしっかり守る「Eフルート」ダンボールのセット箱もご用意。

本件では、将来的に複数のフルーツを用いてシリーズ拡大していくため、あらかじめバリエーション品への対応を想定しておく必要がありました。そこで、オフセット印刷並の印刷品質があり、小ロットで多品種展開が可能な「デジタル印刷」を用いて、品質とコストの最適化を図ることに。さらに、組み立て時の作業効率を高め、必要最小限の用紙使用量で商品をやさしく包むことのできる「封筒型」のパッケージを採用。視覚伝達効果を高める印象的なフルーツのイラストで、アイキャッチ効果と「記憶に残る」キービジュアルを設定。仕上げに、若年層へのアピールとシリーズ品であることを「ひとめで」伝える、全品共通となるポルカドット(水玉)柄の装飾を施し、パッケージは完成しました。たとえ、地域の食文化を伝える逸品であっても、時代が進めば、商品を「知らない」生活者も増えていきます。新たな視点で商品そのものを昇華させ、パッケージングを最適化することで、文化をも伝播する「きっかけ」となる商品が誕生したのです。





【KEY COLORS column】
象牙色:Ivory

淡く黄色がかった、文字通り「象牙」のような薄い黄白色です。洋の東西を問わず珍重された素材であることから、色名としての歴史は古く、数百年以上前から使われています。主張が抑えられている分「ベースカラー」には最適で、他の色彩を引き立てる配色効果を得られます。特集では、使用するフルーツごとに変わるキーカラーを引き立てる名脇役として、明るさと軽やかさを演出しています。

【いいパッケージは、何が違う?】
見栄えよく、そして包みやすく。開けやすく、しかも捨てやすく。なんだか良いところばかりで、欲張りに思えるかもしれませんが、これがあらゆるパッケージで求められる「伝達・充填・開封・廃棄」という開発の基本要件。封筒型のように簡素なパッケージである程、利用可能な面積と折り曲げの範囲が限られるため、機能と役割を「果たし尽くす」よう、選び抜かれた方法が選択されています。

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