2020 April Issue 108


モノであれ、行為であれ、たくさんの中から「選ぶ」行為が日常となった現代社会において、選ばれる存在となるには、購入決定時の要因となる、他にはない「サムシング」が必要です。たとえば、食べ物であれば「美味しいこと・美しいこと・誰かにシェアしたくなること」などで、他の商品とは明確に違う「何か」の存在を、購入者に発見、もしくは体験してもらう必要があります。特に大事なのはファーストインプレッション、すなわち第一印象。対象品を初めて購入するときの期待値が高いほど「期待を裏切らないこと」への重要性は増し、練り上げられたひとつひとつの工夫がリピート購入のための「加点ポイント」として加算されていきます。これは、商品と生活者との「はじめての出会い」で得る印象次第で、その後の付き合いの長さ、将来の「ロングセラー化」にさえ、大きく影響してしまうことを意味しています。

実は、見た目以上に大切なのが、使い勝手。たとえ、商品を販売する側が「テスト販売」を想定していたとしても、購入する側にとっては「はじめての出会い」であることに変わりはなく、このときの体験が対象品に対する「印象」を決定づけてしまいます。中でもパッケージの「使い勝手」の良し悪しは「ファンづくり」のポイントで、ここに積み重ねた「開発ノウハウ」が活かされます。今回のストーリーは、種子島(鹿児島県)で特産品の製造・販売を手がける「ひめ工房」様からのオーダー。対象品は、特産の「安納芋」をふんだんに使用した「手作り」の焼き菓子です。

こうした「新商品」を展開する場合、売上実績が存在しないため、販売数量(製造ロット)の予測は難しくなりがち。さらに、あらゆる販売施策が投下され続ける成熟市場においては「高いパッケージ品質」も要求されます。こうした場合に有効なのが、デジタル印刷。網点対応の「デジタルオフセット方式」による印刷品質や小ロット・多品種に対応するフレキシビリティの高さなど、商品導入初期において大きなメリットが期待できます。そして、最良の「初めての出会い」を演出する数々の工夫(解説写真参照)を忍ばせ、販売地域の独自性ともいえる「ならでは」となる要素、具体的には「種子島=宇宙センター=ロケット」を加え、確実に販売先(宇宙センター)を確保した上で、量産品として「十分なスペックを備えたパッケージ構造」と「共感を得やすい」イラスト、そして、明らかな「手作り感」を感じさせる筆文字と手描き装飾を加え、はじめから「最適化された」パッケージとして誕生したのです。

 


ひめ工房様のサイトはこちら。

himekoubou.jp


色彩には連想させる固有のイメージがあります。色の持つ力を利用してパッケージ開発をおこなえば、ターゲットへの距離はさらに縮まります。特集のパッケージでは、安納芋の「ほくほく」とした美味しさと「手作り感」を伝える「ウォームオレンジ」をキーカラーに使用しています。色彩は、感覚を刺激して商品の魅力を「無言で語る」メッセンジャーでもあるのです。


平らな紙を「立体」へと変化させる「箱づくり」には、一般的には知られていない工夫が随所に設けられています。たとえば、N式(TN式)構造のパッケージで多用される、2箇所の「ツメ」。これは「垂直壁を固定する」ロック機構で、立体化の「要」ともいえる部分。立体構造(箱としての形態)を維持する上で欠かせない躯体固定機構で、ほんの僅かな工夫が「紙」を「箱」へと進化させています。

 

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