「プリューミーガウン」パッケージ

2017年8月号 THE PACKAGING STORY #76

感謝と惜別の気持ちを込めた贈りものにふさわしく、 質感と美しさを静かにただよわす、エンディングドレスのパッケージです。

終活ブームに代表されるように、今日、死への意識変化に伴い、フューネラル(葬祭)ビジネスは葬儀の運営だけにとどまらず、葬儀の事前・事後のサービスにまで拡大しています。人生の最期にまとう衣装「エンディングドレス」も、そのひとつ。今回のパッケージング・ストーリーは、人生の締めくくりに感謝と惜別の気持ちを込めた特別なギフトパッケージづくりに取り組んだお話です。

アイビーシーズ様(本社・福岡市)の代表取締役である山﨑康晴さんは、ニューヨークでアパレル関連のビジネスに携わっていましたが、白装束にこだわらず、愛用していた着物や洋服を着て旅立たれるケースが増えていることを知り、日本のフューネラルニーズの変化に関心を覚えたそうです。そこで、帰国後、エンディングドレスを企画・販売しようと起業され、生前に自分自身で選んでいただける、あるいはご家族からの最後の贈り物としてお選びいただけるエンディングドレスのブランド「プリューミーガウン」を立ち上げられました。そして、その人生にとって特別な「プリューミーガウン」のパッケージ開発を、私たちサガシキにご依頼いただいたのです。

お話をお聞きして、通常、私たちがめざす“売れるパッケージ”とは趣向が異なることを強く認識し、大切なのは目を引くグラフィックではなく、質感(素材)やフォルムの美しさをシンプルに、静かに主張するデザインであると指標設定しました。

一方、中身は衣装ですから、それなりの嵩(パッケージサイズ)が必要です。つまり、質感や色彩バリエーションの豊かな高級特殊紙を使用してしまうと、製作コストが大きく跳ね上がってしまいます。そこで、紙器(厚手の紙材を用いた箱状の包装用容器)類で汎用的に使用されている板紙という厚紙の中から、コシとハリがあり、たわみにくく、成形した際に躯体として美しいフォルムを保つことのできる「ウルトラH」という板紙を採用することにしました。

さらに、控えめな上品さと、触れたときの上質感をどうしても活かしたいと紙の裏側をパッケージの表面に使用する発想を採り入れることにしたのです。 「ウルトラH」の裏側は、しっとりとした質感で、ほんのりクリーム色を含んだアイボリーカラーが温かみとやさしさを印象づけます。シンプルなデザインに使用紙のアイディアを加えて仕上げた試作をアイビーシーズ様へご提案したところ…「これは、気品がありますね! 紙の表側と裏側を逆転させる驚きのアイデアも、商品イメージにぴったりです!」と即決いただきました。その後、デザインのブラッシュアップを行い、こうして2017年1月、パッケージが完成。ウェブサイトにて人生で特別のギフト「プリューミーガウン」の販売がスタートしたのです。

売場で、商品の存在を主張すべき際には色彩やグラフィックを駆使して「はっきり」と、今回のように特別なシーンのギフトの際には質感と佇まいで「しっとり」と。パッケージは常に商品と寄り添いながら、素材、形状(構造)、色彩、グラフィック…をかけ合わせ、販売先や商品の特性、購入心理に最適化しなければなりません。私たちサガシキにとって、パッケージング開発とは商品に最もふさわしい衣装をまとっていただくことだと考えています。